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人生の最終ステージを支える介護のプロ、全力で育てます

金沢春日ケアセンター
介護老人保健施設 介護職
介護主任
入職年:平成10年

◆資格
介護福祉士、認知症ケア専門士

Interview

インタビュー

Q.介護の道を選んだきっかけはどんなことですか?

“ナンバーワンホスト”を目指すつもりで介護に打ち込む!

A.私は26歳の年の8月に一般企業からの転職で春日に入職しました。ハローワークで求人票を見た時に、何となく行ってみようかなと思ったのがキッカケです。知識も経験も無かったですが、配属になった部署で当時上司だった方から「利用者様からの指名ナンバーワンのホスト?を目指せ」と言われました。冗談ともとれる言葉ですが、その日から「あんちゃん!」「ちょっときて」「お茶たい!(ちょうだい)」と何度となく呼ばれるたびに、誰よりも早く利用者様のそばに駆け寄り、応対を繰り返しました。認知症専門棟だったので「名前」で指名されることはほとんどありませんでしたが、それでも当時は職員に「あんちゃん」が少なかったので、フロアのご高齢マダムの方々にとっての「ナンバーワンホスト」に近づけたのではないかと思っています。

Q.介護職として仕事をしていて、印象に残るエピソードなどはありますか。中村さんは介護の仕事をどのように見ていますか。

苦手だったご利用者と築いた信頼関係―自分の自信に

A.介護職として働き始めた当初のことですが、苦手にしていたある認知症のご利用者がいらっしゃいました。その方への対応を克服するために、出勤時は最初にその方のところに挨拶に行き、その日の機嫌をうかがったりしていました。かなり言葉のきつい方だったので、挨拶にいったとたんに、「うるさい、あっちいけ」と言われることもありました。そんな日は、自分のモチベーションを上げるのに大変でした。年下の先輩職員で上手にコミュケーションをとれる人がいたので、その先輩の様子を見たりしながら、マネをし、とにかく苦手意識をもたないように、必死に声掛けを行っていました。そのうち、あからさまに嫌な顔をされることはなくなり、「あんちゃん、トイレつれてって」と介助を頼まれるようになったのです。ずっと失敗続きだったことが、1回の成功体験で、自分の中に自信が生まれ、その後の声掛けも自信をもってできるようになりました。単にお話上手なだけでは、相互の信頼関係を築くコミュニケーションとはなりませんが、懸命な姿勢は、言葉以上に利用者様に伝わると思います。直接利用者様と関わらない場面でも、一所懸命な姿勢を貫けば、間接的にでも必ず相手に伝わります。私がシーツ交換や居室ベッド周囲の環境整備を重要視するのもそのためです。派手さはない地道な裏方業務が、介護の質を左右すると思っています。

Q.石川県からの任命を受けて、中・高校生に介護の仕事の重要性ややりがいなどの魅力を伝える「伝道師」の仕事も担っていますが、具体的にはどのような活動をされていますか。

「介護職、魅力はあるが職業にはしたくない」…を払拭したい

A.若い世代に広く福祉の魅力を知ってもらうための取り組みとして、平成27年に「介護・福祉の仕事の魅力伝道師」が生まれました。私は高齢者介護の分野における伝道師として、石川県よりこの役割を拝命いたしました。講演依頼のあった学校(主に高校)へ出向き、「介護の仕事」について実際の現場で働く介護福祉士の立場から介護の魅力を伝えることが伝道師の役割です。

これまで石川県内全域に出向き、たくさんの生徒さんたちに話を聞いてもらいました。もともと介護の仕事に対して良い印象をもっていた生徒は少なく、話を聞いてから「良い印象に変わった」という生徒が増えていることは嬉しく思っています。しかし、職業選択となると話は別です。魅力はあるが、低賃金・重労働・高ストレスなど、介護職に対しては依然マイナスの印象が根強くあるとともに、介護職の社会的地位の低さが根底にあることは疑いようがありません。介護の仕事をしてみたいと思っても、親が反対するというケースも良く聞きます。「介護の魅力伝道師」として、介護が職業として選ばれるために超えなければならないハードルがたくさんあることを、改めて感じています。

Q.介護職という仕事はそんなにキツイ仕事ですか?大変な中にも、意義、魅力を見出すことはできますでしょうか。

A.高齢者は社会的弱者と言われていますが、現在は権利意識が強い方も多く、歳を重ねてもより自分らしい生活を望む方が増えてきました。仕事として行う「職業介護」は対価の伴うサービスである以上、利用される方のニーズに応えなければなりません。食事・入浴・排せつの介助が主だった介護の仕事は遠い昔。今は高度な知識と技術を要する専門職として、医療職など他の専門職と連携しながら利用者が求めるものに応えていく必要があります。

人が人を介護する意味…それは感情のふれあいが生まれること

私は介護の専門職として「より安楽な移動」や「信頼感を生むコミュニケーション」を心掛け日々実践しています。介護を必要する高齢者の生活に密着し、心と体に触れる機会の多い私たち介護職は、他のどの職種よりもご本人からの信頼を得なければならない存在です。IT機器や介護補助ロボットの存在が取り沙汰される中で「人が人を介護する」意義は感情のふれあいが存在することです。特に脳の病気により認知症状がある方にとって、人の感情こそが生きる道標であり、自身の存在価値を高めてくれるものであると私は信じています。

ご本人の想いがかなった時の笑顔、それが介護職へのご褒美

たとえ明確な意思表示ができなくなったとしても、本人のニーズを感じ取り、その代弁者たる存在になること、そして本人の想いがかなったときに見せる最高の笑顔が、私たちへのご褒美であり、介護の仕事の魅力なのではないかと思います。人の人生の最終ステージを支える「職業介護」の担い手として、悲しさも苦しさも、そして楽しさも全部ひっくるめて、私は介護が大好きです。

Q.人手不足は大きな課題ですが、よりよい介護人材を育てるために取り組んでいきたいことはありますか。

A.他の専門職と違い「介護職の入り口」はとても広いのが特徴です。初めて介護の仕事に就く年齢も18歳~70歳代と二世代ほどの開きがあります。現場では、若年者が年配者を指導することも珍しくありません。私たちの施設には、介護経験の有無、世代などを問わず、安心して受けられる体系化された教育システムがあり、計画に則った研修や現場指導を行っています。

また、介護老人保健施設では「プリセプター制度」を設けています。これは、一般企業のOJTのような仕組みですが、仕事のあらゆる場面を通じて先輩職員がアドバイスをしたり、相談相手となって新人職員をサポートします。新人も先輩職員もともに成長する機会となっているのが特徴です。また、いわゆるレベルに応じた管理的な教育も充実していると思います。それ以上に「介護の仕事の楽しさ」を現場の仕事の中で伝えられる先輩職員が数多くいることこそが、人材育成がうまくいく最大の要因になっていると思います。

ひたすら一所懸命に介護をやりたい人、全力でサポートします

私自身は、介護の楽しさを共に分かち合える仲間を育てていきたいと思っています。高齢者介護は何といっても人と人のふれあいです。人手不足だからといって提供するサービスの質を落としたり、妥協はできません。人材育成においても、多少不器用でも、高度な知識や技術が常に伴わなくても、ただひたすら一所懸命に、「介護の楽しさを知りたい!」「学びたい!」という人を全力で育成し、サポートしたいと考えています。もっと具体的に言うと、介護技術を高めたい、認知症の方の行動心理を学んでコミュニケーションを上手にとれるようになりたい、などほかの専門職に負けないプロフェッショナルな介護を目指したいという人と、仕事をともにし、学び、成長していきたいというのが私の願いです。