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経営と福祉の視点の絶妙なバランスをマネジメント

金沢南ケアハウス 施設長
品質マネジメントシステム(QMS)統括管理責任者
入職年:平成7年

◆資格
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、福祉レクワーカー、福祉住環境コーディネーター2級、日本介護福祉教育学会会員、教員免許(小学校・中学社会科)

Interview

インタビュー

Q.介護、福祉の道を選んだきっかけはどんなことですか?

教員を目指すも…ご縁あって介護・福祉の世界へ

A.私は、小さい頃から小学校の教員になることが夢でした。大学で教員の免許を取得しましたが、石川県の教員採用試験に5年間落ち続け、その道を断念することにしました。26歳の時でした。教育がダメなら次に何をしようかと思案し、ふっと思いついたのが介護・福祉の道でした。非常勤講師をしていた頃に、担当したクラスに発達障がい児・自閉症・知的障がい児がいたことが機会だったのかもしれません。また、履歴書を有利にするために、障がい者の作業所でボランティアをしていたことがきっかけだったのかもしれません。もっとも、その頃バブル崩壊の影響で他に就職先がなかったことも大きな原因でしたが…。
しかし、いくつもの施設・事業所の試験・面接で、不採用になり続け、自分という人間の存在理由が見えなくなってきていた頃に、縁あって金沢南ケアの一員になることができました。25年も前の話になります。おかげで、就職してから多くの経験をさせて頂き、またいくつもの資格も所得しました。介護・福祉の専門職として、今自分ができることは、その得た知識・技術を広く社会・地域・後輩職員に還元することだと信じています。もともと職員志望だったため、そのことに喜びを感じる性格なのかもしれません。

Q.金沢南ケアの「品質マネジメントシステム(QMS)」管理責任者をされていますが、介護サービスの品質を上げるために具体的にどのようなことに取り組んでいますか。

A.金沢南ケアのQMS委員会の中に、リスクマネジメント、身体拘束廃止高齢者虐待防止、感染対策、安全衛生の各委員会を設けており、介護サービスの質を維持できるよう課題を見つけたり、工夫できることがないか検討するなどの管理を行っています。

平成30年4月の介護保険改定では、老健など入所系サービスで身体拘束廃止や高齢者虐待防止についてさらに重要視される内容が盛り込まれました。施設としての指針を示すこと、会議を多職種・多部署で定期的に開催すること、職員研修会を年2回以上開催することなどが定められました。これらを確実に行いながら、職員が利用者に対してより人権を意識して仕事ができるようにします。

教育、研修の場をきめ細やかに設ける

また、職員の質の向上のためには、さまざまな分野での教育、研修も必要となってきます。年6回を超える全体研修のほか、経験年数別のグループ研修、介護現場をまとめるチーフ・サブチーフの管理職研修なども企画しています。各部署では、現場での実務を通したOJT教育を行っています。

Q.金沢南ケアは“大規模多機能”な施設です。地域の中では、どのような役割を果たしていると考えていますか。

A.金沢南ケアセンターが開設してから、四半世紀になります。地域の中の中核的な介護保険施設として、地域住民に周知されています。これは多機能型の施設・事業所が同じ法人内にあり、お互いに連携し合うワンストップ化だけが理由ではないと感じています。

経営的な見方と、福祉的な考えのバランスの絶妙さが信頼の源

金沢南ケアでは、要介護者がその人らしい生活を送っていくために、どのようなサービスが適当か検討し提案していくことが徹底されています。その結果、別の法人のサービスを利用することにつながることもあります。もちろん民間の法人として収益を上げていくことはとても大切なことです。ただ、それに固執し過ぎることによって、ご本人らしい生活が阻害されることがあります。経営的な見方と福祉的な考えのバランスの絶妙さが、地域住民や行政からの良い評価につながっていると考えています。

Q.介護サービスの品質向上のために、これから充実させたいと考えていることはありますか。

A.介護人材の確保が難しい時代になりました。介護福祉士という専門職だけでは、利用者に対して満足なケアを行うことができません。専門職でないと担うことができない直接介助と、少しの知識で支援ができる間接介助を分けて機能分化を進めていく必要があると考えています。いわゆる「介護助手」という働き方です。その間接介助を担っていただく貴重な人材として光を当てたいのが、子育て中の主婦や中高年齢層、外国人アルバイト、障がい者などです。


働き手の多様性を認めることから、“働き方改革”を進める

そのためには、まず地域にある人材を掘り起こして、その方々がどのような役割を果たすことができるのかをリサーチすることが必要です。また、現場の職員の間でも、働き手や働き方の多様性を認めていく文化を醸成していくことも大切です。

これは全国老人保健施設協会の東憲太郎会長が、地元三重県の委託事業で行った介護助手の取り組みが基になっており、今厚労省でも注目している施策です。その機能分化を当法人、金沢南ケアの組織の中でも上手にマネジメントできたらと思っています。