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「住み慣れた地域で自分らしく生きる」を支えたい

野々市市郷・押野地区 地域包括支援センター
センター長
入職年:平成7年

◆資格
社会福祉士、主任介護支援専門員

Interview

インタビュー

Q.高橋さんが仁智会に入職された頃から、高齢者介護をめぐる状況は大きく変わっていきました。どのような思いで仕事を続けてきましたか?

A.平成7年は、1月に阪神・淡路大震災、3月にオウム真理教地下鉄サリン事件と日本中を震撼させる災害や事件が次々と起きた歴史に残る年です。私にとっては更に仁智会入職という人生のターニングポイントの年でもあります。その後、平成12年に介護保険法が創設され、高齢者を取り巻く状況が大きく変わり、私もその濁流に身をゆだねるしか術がなく、右往左往している間に25年が経過しました。 高齢化率の増加、一人暮らし高齢者や認知症高齢者の増加、高齢者と無職・独身の子供さんとの世帯の増加等の社会情勢を肌で感じながらも、楽しく仕事を続けてきました。入職当時小学校2年生だった一人息子は、32歳になり、結婚して北海道で暮らしています。

Q.金沢南ケアセンターの中に、野々市市郷・押野地区地域包括支援センターが設けられ、地域の高齢者を支える拠点として機能しています。具体的にはどのような役割を担っていますか。

A.平成18年4月に全国的に地域包括支援センター(以下、包括)がスタートしました。野々市市は市直営で包括を運営していましたが、高齢者人口の増加に伴い、平成28年10月~3か所の施設に委託されるようになりました。私たちは、『野々市市 郷・押野地区地域包括支援センター』として、郷地区と押野地区を担当しています。

古くからの住宅地に新しい家やアパート、マンションがどんどん建ち、昔から住んでいる住民と転入者が入り混じって暮らしている地域です。大きな県営住宅もあり、一人暮らしの高齢者が多いのも特徴です。野々市駅や大きなショッピングセンター(御経塚イオンやコストコ)等の商業施設があって活気もありますし、金沢南ケアセンター以外にも有料老人ホーム4か所、通所サービス3か所と介護保険サービスも充実している地域です。

高齢者を守る―消費者被害、高齢者虐待の予防や早期発見も

包括の仕事は多岐に渡ります。高齢者ご本人やご家族、地域の方、民生委員さんや町会長、そしてケアマネさんやサービス事業所の方々から様々な“困りごと”の相談が寄せられます。高齢者の権利を守るために、成年後見制度の紹介をしたり、消費者被害に対応したり、高齢者虐待の予防や早期発見も大切な業務です。また、要支援1・2の人や事業対象者、虚弱な高齢者のケアプランのプランニングもしています。そして、地域サロンや町内会行事に出向き、『介護予防教室』を開催することもあります。

Q.最近は、自宅でお一人暮らしをされている高齢者も増えています。地域の高齢者をサポートするために力を入れていることはありますか。

A.地域の皆さんと協力しながら暮らしやすい地域づくりをするのも包括の仕事です。野々市市は2020年度の住み良さランキング全国1位(東洋経済社調べ)で、平均寿命も高く、特に女性は88.6歳で全国5位と元気な高齢者の多い市です。石川県内で一番若い市(平均年齢40.71歳:全国の市で8位)でもありますが、それでも高齢化率は少しずつ高くなってきており、現在、約20%です。今後も増加していくことが予想されていますので、要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるような仕組み作りが急務です。

そのためには、介護保険サービスはもちろんですが、買物支援やゴミだし、安否確認、交流の場作りなどの住民同士のつながりや助け合いの仕組みが必要です。大型スーパーもあり、利便性の高い野々市市ですが、車の運転をやめると、買物や通院などの外出に困る方がいらっしゃいます。そういった方々のニーズに合わせて、移動スーパーを誘致したり、スーパーの送迎車のルートの変更を交渉したりしています。また、自動車免許を返納するかどうか決めかねている方にお会いすることも多く、同じ不安を抱えている方と一緒に「どんな仕組みや制度があると、免許を返納しても地域で生活していけるか?」といったことを話し合うこともあります。

認知症の初期段階からサポート、「ざっくばらんに語ろう会」の開催

また、私達の包括独自で行っていることとして、『本人ミーティング~ざっくばらんに語ろう会~』があります。物忘れ等を自覚している認知症の初期段階のご本人とそのご家族が月に1回集まり、頑張っていることや困っていること等をおしゃべりしています。

Q. 「大規模多機能」な介護施設、金沢南ケアセンター内にある地域包括支援センターだからこそできる地域貢献とはどんなことでしょうか。

「困ったことは、とりあえず、南ケアセンターさんに相談すればいい」頼りになる拠点に

A.包括のセンター長になってから、少し離れたところから南ケアセンターを俯瞰して見ることが多くなりました。そうすると、以前は気づかなかった当施設の地域での位置づけに気づかされます。南ケアセンターは地域住民やケアマネさんからの信頼度は思っていた以上に高く、「困ったことがあれば、とりあえず、南ケアセンターに相談すればいい」といった言葉を耳にします。平成7年5月の南ケアセンター開設時から20年以上ここで仕事をしている私にとって、南ケアセンターは『手のかかる子供』のような存在で、褒められれば素直に嬉しいですし、悪い評判を聞くと悲しくなります。こんな南ケアLoveの私ですが、地域の方々からの信頼にこたえるためにも、南ケアセンター併設の包括だからこそできることに取り組んでいきたいと思っています。

地域カフェ、デイサービスの送迎車の空き時間活用タクシー…地域づくりの旗振り役もいい

例えば、地域の方が気軽に集まれるカフェのような場所を作れないか。また、野々市市内に16か所ある通所サービス事業所の送迎車の空き時間を有効活用して、有償の乗り合いタクシー的な運用ができないか。これは、いろいろな法律に触れるところがあり、私達包括だけでは到底実現は難しく、社会福祉協議会や市役所、通所サービス事業所連絡会等と相談したり、連携したりすることが必要になってきます。しかし、こういう仕組みがあると、車の運転免許を返納することを決断する方が増えるのではないかと確信しています。―今すぐには実現できなくても、夢物語のように地域づくりを考えてみるのも楽しいです。