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よりよい生活のマネジメント、リハビリにお任せください

金沢春日ケアセンター
理学療法士
リハビリテーション課 主任
入職年:平成10年

◆資格
理学療法士、介護支援専門員、医学経済学会会員、金沢春日ケアセンター教育委員会委員長、リスクマネジメント委員会委員長

Interview

インタビュー

Q.ざっくばらんに自己紹介をお願いいたします。リハビリ専門職としての人生を語ってください!

A.私、自己紹介はあまり好きではないというか、得意じゃないのですよね。専門職としての人生と言われても困るのですが、他の人とは少し違うところがあると思うので、その辺りのことを少し語ってみます。
まず、「志」から違います。多くの人はリハの専門職になろうと思ってリハの学校を志すと思うのですが、私の場合そうではありません。当時は理学部か工学部に進学したいと思っていたのですが、志望した大学に受からず、父に言われてとりあえず受けていたリハの学校に行きました。でも、その入った学校がとてもいいところで、先生や仲間にも恵まれ、そこからリハにはまりました。

リハビリ+α 入職6年目で大学院へ、医療経済を学ぶ

その後、学校を卒業し、リハ専門病院での勤務を経て仁智会に就職するのですが、学生の頃から、我々の仕事って一体何なんだろうという疑問を持っていました。現場に出ると、患者さんは自分より目上、年上の人ばかり、そんな人たちから「先生」と呼ばれ、自分たちのすることは「立って下さい。」「歩いて下さい。」という、一見バカみたいなことばかり。また、中にはやたら偉そうに先生している人もいる。これって一体何なんだろうと。就職4、5年目頃から病院機能評価や医療の質の評価が言われるようになり、興味があったので色々と調べていたのですが、その過程で医療経済や日本における医療経済の第一人者である西村周三先生の存在を知り、一度西村先生の下で勉強してみたいと思っていました。それで、退職し、西村先生の下で勉強するために大学院に行ったのが仁智会に就職してから6年後のこと、その後、平成22年に再び仁智会に戻ってきています。

Q.現在、リハビリ課のリーダーとして取り組んでいる仕事について教えてください。

A.利用者さんの利用されているサービスに合わせたリハビリを提供できるようコントロールする仕事をしています。金沢春日ケアセンターは、入所、在宅、訪問など複数の医療、介護サービスを展開している複合施設です。リハビリ課も老人保健施設、デイケア、訪問リハビリの利用者さんにリハビリを提供しています。ケアハウスについては、ケアハウスの職員が作成する利用者さんの個別機能訓練計画について、リハビリ専門職としての立場、視点からアドバイスをしています。

生活スタイル、利用されるサービスに合わせたリハビリ計画を組む

対象者が異なれば提供するリハビリの内容が異なるのは当然のことですが、利用して頂くサービスによっても提供すべきリハは異なります。それぞれのサービスを利用される人の生活の中心となる場所や、リハを提供する場所が異なるからです。そして、個々に独立したリハビリを提供するのではなく、利用者さんの生活スタイルに即したプログラムを組みます。

Q.利用者さんの生活スタイルに即したリハビリプログラムとはどのようなものですか?

A.例えば、自宅で生活している人がより良い生活を営めるよう、まずデイケアで当施設を訪れた際には、環境が整ったここのリハビリ室で基礎的な体力や動作能力の改善を目的としたリハビリを行ないます。具体的には、立ち上がりや歩行をはじめとしたその人が自宅で生活し続けるために必要な動作の獲得、それらの動作をできるだけ無理なく行える方法やそのために必要な用具の検討、動作のベースとなる筋力や体力の改善などです。また、利用者さんによっては能力の改善が難しい人もいるので、そのような人にはできるだけ今持っている能力を落とさない、これ以上介助量を増やさないためには何が必要かを検討、実施します。

施設でのリハと並行して訪問リハも

このデイケアでのリハビリと並行して、訪問リハビリで、獲得した能力や検討した動作や介助のやり方を実際の生活の場面で活かしていくことを目的としたリハビリを行います。例えば、家事動作への応用もその一つです。それぞれのサービスの特性を結び付けながら、その人の生活を踏まえた、その人にあったリハビリを提供していく。そのための仕掛けや工夫を一緒に働く他の職員と共に考え、実践する。それが私の仕事の大きな部分を占めています。

Q.今、高齢者のリハビリに対するニーズは強まっています。身体機能の回復という視点だけではなく、よりよく生きる、新しい生きがいを見つけるなど幅広い視点でもリハビリへの期待が高まっていますが、専門職としてどのようにとらえていますか。

A.人口構成や疾病構造の変化等を背景にした社会の変化や時代の要請の変化にともない、リハビリに要求されることも変わってきていると思います。しかし、リハビリがすべきこと、本質的に担わなければならないことは変わっていないと思います。むしろ、一昔前よりもリハビリの本質的な部分がより厳しく要求されるようになってきていると思います。

機能訓練にしか目が行っていないリハビリでは不十分

以前から、「機能訓練」に偏重したリハビリが批判されています。それは、機能面の向上を目的としたリハが悪いのではなく、機能面にしか目が行っていないこと、言い換えれば、視野の狭さとバランスの悪さが問題なのだと思います。リハビリの語源は、「人間の価値や尊厳の回復」です。私自身は、リハビリは生活のマネジメントだと考えています。老若男女を問わず、障害があってもその人らしく生活してもらうために何が必要か、それを考え、実践するのがリハビリです。当然その中には、身体機能やADLの向上、生きがいや役割の見い出しも含まれますし、昨今進化の著しい福祉機器を上手に活用すること等も含まれてきます。

リハビリも社会や価値観の変化に合わせて、しなやかに対応

その人らしい生活というのは、生活スタイルや価値観、ご家族の考え方などによっても異なります。そして、医療技術や社会情勢が進化、変化すれば、生活スタイルや価値観も変わってきます。そのような違いや変化に対応しながら、何かに偏重するのではなく、その方の生活をふまえてバランスの取れたトータルなリハを提供していく。そういうしなやかさが求められていると思います。


Q.リハビリ専門職は、医師、看護師、介護職など多職種のチームで一人の高齢者を支える場面も多いと思いますが、多職種と連携する上で留意していることはありますか。

「生活という視点」から提供するケアを考える役目

A.残念なことですが、どんな方がいらしても通り一遍のケアしかしない専門職も少なからずいるように思います。利用者さんの状態や生活にあわせて提供するケアを柔軟に変えること、今後その方の状態や生活がどう変化するか、また、どう変化させるべきかを見通した上で、今すべきケアを考えるという視点がないと、その方の生活にあわせたケアはできないと思います。生活を踏まえたサービスというのがリハビリの持つ特性の一つだと思いますが、その生活という視点から他の職種に提案をしたり、議論をしたりすること、それらを通じて、生活をキーにそれぞれの職種が提供するケアをつないでいくこと、そこにひとつのリハの役割があると思います。

また、多職種と連携する際には、バランスを取ることを常に考えています。ケアの内容やサービスを調整している時に、「利用者さんやご家族がこう言うから」「○○がこう言うから」という言葉を職員から聞くことがあります。もちろん、利用者さんやご家族の意向を無視するつもりはありませんが、誰かの意向や意見ばかりを尊重してもチームはうまく機能しませんし、必要な調整ができていない時にそのようなことがよく起こっているように思います。そのような時には、どうすればもっと職員がバランスよく動けるようになるかなということを考えるようにしています。