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心を込め、人生に寄り添う看護に努めます

金沢春日ケアセンター
看護師
入所療養課看護主任
入職年:平成23年

◆資格
石川県看護協会職能Ⅱ委員、排便ケアPOOマスター、春日ケアセンター業務委員会栄養サポートマイスター、ストレスチェック実施者、終末期ケア専門士

Interview

インタビュー

Q.日々の業務内容や仕事で心掛けていることを教えてください。

A.私の一日は、老健に入所されている利用者様の健康状態(特に発熱や症状)について介護記録システムでサーベイランスすることから始まります。高齢の利用者様が共同生活されている場所であり、ひとたび感染症が侵入すると瞬く間に拡大していきます。いち早く240名の利用者様の異常を発見し何かあればICT(感染対策委員会)に報告、早急に手だてを打ちます。

職員が看護、介護の仕事に力を注ぐためのアシスト役も

また夜勤の看護職員に利用者様の異常はなかったかを確認し、その中で気になる利用者様のもとへ行き自分の目で観察、介護職員から情報収集、今すぐに医療的処置が必要かをその階の担当の看護職員とアセスメントしていきます。状況に応じて多職種と連絡を取り合い問題の解決に向かっていくための橋渡しをします。また、医師との調整も大きな役目の一つです。医療的な部分と利用者様の生活、今後のQOLのあり方に差異がある場合どう縮めるかのディスカッションも必要な仕事の一つです。現場に看護職員の不足や、利用者様の急変があればすぐに向かいます。検査データの配達や、必要物品の調達、事務的な仕事などなど。縁の下の力持ち?的な仕事が多いです。私の職務は、職員が利用者様の看護、介護に力を注ぐことができるよう環境を整えるアシスト役です。

Q.老人保健施設での看護やケアについて、やりがいを感じているところはどんなところですか?

一度、病院看護から離れてみようと思ったきっかけ

A.病院勤務時代は通常業務に加え、疾患、検査の学習、論文の作成などに追われていました、専門職として当然のことなのですが、患者様のもとに伺ってゆっくりお話をする事ができないことに悩んでいました。そんなある日、肝臓癌の末期患者様を受け持つことになりました。特に何か意図していたわけではなかったのですが、毎日勤務時間後に病室に伺って、本人様とご家族から、病気にまつわることだけでなく、その方の人生やご家族のエピソードを聞かせていただき、一緒に泣いたり笑ったりしながら、他愛もない時間を過ごして帰ったりしました。その患者様はそれから2週間後にお亡くなりになられたのですが、後日ご家族からお葉書が届きました。私が病室に寄った時間だけはご家族も患者様も苦痛から逃れられた時間であった、という内容でした。自分のやりたい看護ってこういうことなのかなと思いました。一人の人間として人と出会い、一人の人間として人と向き合い自分ごととして考える。もう一度人間を磨いて今度は納得のいく看護をやろうと一度病院看護から離れました。

心を込めて関わることを大切にしたい

老健ではその方の人生背景、疾患、障害の程度、今後どう生活していきたいかを主軸に焦点を考える目標志向型思考でその方の強みを見つけ出し、その人らしく目標に向かって多職種と連携しケアを提供します。現在縁あって仁智会にお世話になっております。人生の大先輩の生きてこられた時代背景を想像するのには未熟で頼りない自分でおこがましいですが、人生の伴走者の一人として隣でともに泣き笑いかけがえのない一日一日を過ごさせていただくことに感謝と喜びを感じています。マザーテレサの言葉で「いかにいい仕事をしたかよりもどれだけ心を込めたかです」とあります。ひとつのケア、刹那の表情、言葉かけ、自分ならどう感じるだろうと思いを巡らせ心を込めて関わることを大切にしています。

Q.コロナ禍での看護、介護の仕事は大変だと思います。どのように進めていますか?

A.今回のCOVID-19のパンデミックは未曽有の速さで全世界を閉鎖していきました。老健でもクラスターが発生して利用者様、ご家族、そして職員に緊張と困惑が入り混じった空気を作っていきました。施設内に発生する前からICT中心に初期対応、クラスター発生時のシミュレーションを行ってきました。

隔離部屋での不安を少しでも小さくできるよう努める

いよいよ当老健でもクラスターが発生したとき重苦しい空気が流れたのを感じました。先が見えないほど不安なものはありません。職員の不安と焦燥に対しては正確な情報と状況の開示、ケアに必要な物品がなくならないようにしました。利用者様の隔離に対する不安や不満に対しては職員が聞き取り、できるだけの緩和に努めていきました。隔離部屋には臭いがこもって利用者様が不快な思いをしないよう特に換気や環境整備に注意を払うよう職員にお願いしました。私たち管理職が毎日顔を見せ、困りごとを解決し不安を少しでも小さくできるようにつとめました。当施設の医師からも都度差し入れが届き皆の心を和ませてくれました。

隔離解除されたときの利用者様の笑顔とありがとうの言葉が身に沁みました。そしてあらためて日々の営みを地道に支える介護の力の素晴らしさを感じ、この状況下で懸命にフロアを守ってくださる姿に何度も涙腺が緩む日々でした。今後も新たな感染症がいつどの様な形で入ってくるか予測は不能ですが、春日のチームワークできっと乗り越えられるはずと自負しています。

Q.読書が趣味と聞きました。どのような本を読んでいるのですか?支えになっている本はありますか?

A.活字は新しい世界を開いてくれます。自分にとって読書は見知らぬ場所に連れて行ってくれたり、創造力を豊かにし、発想の転換のヒントをくれたり、作者の思いや届けたいメッセージをパズルを解くように文の中から探してみたり、何よりも本のページをめくるときのドキドキワクワクがどんなアトラクションよりストレスの解消になったりします。もちろん情報を得るツールとしても有用です。

老健に入職した時からの愛読書「看護の時代」

老健に入職した時に購入した本があり今も何度も読み返している本があります。『看護の時代』(看護が変わる 医療が変わる いのちのあるすべてのひとたちへ)という本で、故・日野原重明氏、川島みどり氏、石飛幸三氏の対談をまとめた本です。東日本大震災のあと日本の医療のあり方は治療による延命を主眼とする狭義の医療から、一人ひとりが健やかに生きていくことを支えるケアへと変わって行く必要がある。そのために看護、介護が最前線に携わり専門職一丸となりチームで人を支えていく時代に転換させるべき。という内容です。終末期ケアに対する内容も盛り込まれていて、ぜひ皆さんに読んでいただきたい一冊です。最近見つけた小説では宮本輝さんの『よき時を思う』という本で、人間のもつ品性や人徳について高齢の主人公が物語を通じて語ってくれています。はっとさせられます。長編です。ちなみに私の家族からは本を買いすぎることに対し苦情がきていますが…。

Q.高齢者に寄り添う看護として、今後取り組んでみたいと思うことはありますか?

終末期医療と介護

A.やはりエンドオブライフ・ケアについてでしょうか。2009年4月、老健施設にターミナルケア加算が新設され、私が入職した頃からターミナルケア委員会が発足、委員として老健介護職員にアンケートを行ったところ50%以上の職員が不安を訴えていました。その後研修や学習会などを経て今では多職種が協働しより良いケアを実現するために尽力してくれています。

ただ現在、新人介護職員には、終末期の人間の生理や、その人らしく最後を迎えるとはどんなことか、グリーフケアとは、など学ぶ機会が少なく不安を抱いているのではないかと懸念しており教育プログラムの確立が必要かと考えています。また、『人生ノート』を作って最後のひと時までどのような状態でお過ごしであったのかご自宅でお看取りができないご家族の代わりにノートに記入をしてお渡しできたらいいな。栄養サポートマイスターとして言語聴覚士はじめ多職種で『お食い締め』の援助も進めていけたらよいなと感じています。慌てることなく皆さんの意見を伺い協力を得て進めてけたら良いと考えています。