医療法人社団 仁智会

花*ひろば 2017年10月一覧表示

「ごんぎつね」の想い…

春日花アレンジ

主役はきつねの顔に見える不思議な実・・・フォックスフェイス

今回は金沢春日ケアセンターのロビーが、物語の舞台に早変わり。

花器の中心でひときわ目立つ、でこぼこした形の黄色い実に引き付けられます。

カナリアナスというのが正式な花の名称ですが、フォックスフェイスという名前で知られています。

そう、キツネのお顔に見えますね!

ロビーを通りかかった利用者さまも思わず立ち止まって、「かわいらしい、きつねのお顔の実やね」と会話が弾んでいるようでした。

暖かい色合いの花器の中でひときわ目立つ黄色いフォックスフェイス

眺めているうちに、新美南吉の「ごんぎつね」のお話を思い出しました。

「ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった。」

兵十が、病気のおっ母のためにとつかまえたうなぎを盗んだごんぎつね。フォックスフェイスの実からは、兵十のお母さんが亡くなったことを知って後悔するごんぎつねのつぶやきが聞こえてきそうです。ツヤツヤした黄色い実の皮は意外と固いので、ある程度長い期間見て楽しめるそうです。

秋の野山を彩る花や実をイメージ

「おれと同じ一人ぼっちの兵十か。」

ごんぎつねは、その後、償いの気持ちをこめて、山の栗やまつたけを取っては兵十の家に投げ込みます。フォックスフェイスの足元を彩るヒペリカムの赤や黄色の実、オレンジ色のユリ、ベンケイソウの深い赤色は、ごんが兵十のために集めたたくさんの山の幸にも見えてきます。暖色を中心とするおいしそうな色合いに包まれる秋の野山のイメージです。

 

 

ごんぎつねのお話は、ごんの償いの想いが通じないうちに、兵十に鉄砲で打たれてしまうという悲しい結末で締めくくられます。今回の花アレンジを眺めていると、けなげで優しいごんの想いがより力強く伝わってきます。夕日に映える西洋菊の赤みがかったオレンジ色も、物語に込められたメッセージをより鮮やかに表現しているように感じられます。

物語とお花のコラボレーション、どれだけ眺めていても飽きません。幼いころに読んだ名作を、もう一度ゆっくり味わってみませんか。